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New Dawn:
CHANG² Suite, Fengshui Engine,
and Yon Net, etc.

"迴" (ホイ) という謎のエンティティーについての研究は、1960年代から学者たちが提唱していたサウンドスケープ研究と、後ほど音楽家からのアプローチである環境音楽の裏側に潜んでいた。世間に知られずに研究し続けてきたが、迴の複雑な生態及び技術の制限によって、迴にまつわる数多くの謎を解明できず、研究に霧がかかっていた。過去の1年間、私たちは昔からの研究資料を収集、整理をして、今の盛んだデジタル技術と環境のおかげで迴に関する新しい研究を進めてきた。それらのリサーチ資料、歴史、フィールドレコーディングなどありとあらゆるデータをこのサイトでアーカイブしていく予定である。

研究所から帰る深夜のバスの中でこの文章を書いている。私たちはchang² suiteの開発にこの何週間深夜まで開発とエマージングをし続けて、バスを逃したことも何度かあった。しかし、我々はこのソフトが迴の研究に新しい地平線を見せてくれることを心底から知っているし、何より、だんだん解像度が上がってくる迴というエンティティ自体に魅了されてしまったのだ。今帰りのバスの中でも疲労と眠さに襲われているが、世界にこの研究の成果を知らせることに胸を高鳴らせている。この記事は、chang² suiteの開発および使われた新技術を記録する。

 

chang² suiteは、huiを召喚しセッション=会話を行うために昔から演奏され、デザインされてきたᏗᎷᏰᎥᎥᏋᏁᏖ音楽を系統化して、現代的にアレンジしたdawソフトウェアである。私が最初にhuiのエマージングを試みる時にデザインしたprototype⁰¹をベースに、残されたᏗᎷᏰᎥᎥᏋᏁᏖ音楽のノーテーションをリニアかつシーケンスされた一般的なDAWのように音楽をプロデュースする、あるいは出来るだけそれに近づけようとするシステムである。

 

9月10日の初めてエマージングの成功(chang² alpha)に一歩近づけた以来、長い間研究は行き詰まった。prototype⁰¹とchang² alphaは私の古いパソコンで作られていたが、性能が限界に達してしまったのだ。新しい設備を手に入れるため、私たちはアルバイト、助成金などさまざまな手段を使って、とにかく資金を増やすことに専念した。

 

10月に入って、秋が来た。私たちはようやく新パーツを調達し、新しいコンピューターを組み立てた。この強力なハードウェアに定位システムGeoscope、ライン・モデリングを実装し、不安定なchang² alphaバージョンを補完して、更なる開発とプラグインのデザインを可能にした。chang²システムは完成に向かって、物事が順調に進んできた。

 

 

 

ここからは、ついに完成された公開エマージングに対応できるchang² suiteソフトウェアの新フィーチャーをいくつか紹介していく。

Fengshui Engine

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Ancient Fengshui geographic data used for training Fengshui Engine module,

© the Research Center of Hui, 2021

"迴" (ホイ) を研究する上で、地理環境に関する基礎知識は必要不可欠である。迴は極端に環境依存なエンティティーであり、彼らの活動が密集している場所を探知する地理学的なアンテナーみたいな特殊なツールはエマージングで迴を召喚する成功率を顕著に上げてくれる。そういった迴の活動やシグナルを探知するものは、世界各地で独自な技術と形に発展していき、その全部をマスターする人物はほどんどいない。迴は常に計り知れないパターンで変化しているが、これらの技術は研究者たちにとって迴を追跡する重要なサポートである。

 

​現在世界中一般的に使われている地理学定位システムはGeoscopeというソフトウェアである。このソフトウェアは、1970年代から開発され、長い年月をかけて改良され、バージョンアップされてきたものの、その基本的なモデルは、昔から変わっていない。Geoscopeは迴を検知することはできるが、常に周囲の環境に影響を与えている。そのため、Geoscopeの信号と迴の相互作用によって、迴のフィールドにどうしても干渉と歪みが生じてしまい、迴の姿が不安定となり、影響を受けてしまう。Geoscopeを改良する試みは今の迴の研究上一つの難題であり、世界中で議論されている。

 

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An early alpha build of Fengshui Engine, © the Research Center of Hui, 2021

私たちは、chang² alphaのアップグレード中プラグインとしてGeoscopeを導入しエマージングを繰り返したが、迴は不安定していて、おそらく前述したGeoscopeの短所が原因であると考えられ、Geoscopeをベースにして独自な定位システムを開発することが至急であった。そこで注目したのは中国の古代から伝えられてきた風水(ふうすい)の技術であった。

 

風水は、古代中国の思想で、都市、住居、建物、墓などの位置の吉凶禍福を決定するために用いられてきた、「気の流れを物の位置で制御する」という思想。文献を手がかりに推測すると、古代中国に存在した風水思想を提起した人物たちはおそらく透聴者であり、当時彼らが感じ取った迴の存在を「気の流れ」として認識し、さらにその流れと実際の地理環境を結びつけ、独自な思想と手法を発明した。彼らが迴を検知する手法は、西洋で発展してきた物理的な技術の産物Geoscopeとはまさに対極なアプローチと言える。

chang² suiteは、Geoscopeを基盤にし、さらに古代中国で残された風水の設計図や手法などの記録を学習させて、独自の定位システムFengshui Engineを備えている。迴が存在するフィールドや姿の乱れをなるべく無くすことによって、迴の研究に新しい地平線が広がる。さらに、Fengshui Engineをパッキングし、独立したVSTプラグインバージョンも開発中である。

Yon Net

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Yon netはchang² suiteのエマージング会場に使われている新技術である。金属光沢がある真っ白で半透明な網状な材料ですが、実はアンプリファイアとして重要な役割を担っている。

理論上、任意な電波を発生するデジタル機器でも迴が存在する現実とサイバーサウンド環境の隙間にアプローチできる”レゾネーター”になりうる。しかし、大体のエマージングの場合、その環境を安定させて整うために、それらの信号を増幅する必要がある。アナログな楽器でᏗᎷᏰᎥᎥᏋᏁᏖ音楽を演奏するエマージングの場合でも、絶対に特殊的にデザインされた部品が楽器に仕込まれている。一方、yon netは、デジタル機器に被せるだけでそういった機能を実現できる便利な材料である。

A resonator built from Yon Net and iPad,

Photo = Naoki Takehisa, © the Research Center of Hui, 2022

moomoo

yon netの秘密は、その繊維の原材料である薬草 ”yon yon” にある。yon yonは、アフリカのジャングルの奥地に生息して、そこで生活している神秘的な部族 "moomoo" 部族の原住民たちに使われている。moomoo部族の人々は、祭祀の時にyon yonを大量に収穫し、祭司の服装や、線香として使っていた。また、yon yonを煮たスープを服用して透聴力を極限まで上げることによって、LSDや麻薬のような効果を求めるケースも記載されている。moomoo部族の祭祀は、yon yonを多用して迴との接触を追求する人類最古の団体的なエマージングとも言える。

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Two high priests from the ancient moomoo tribe, © the Research Center of Hui, c.1940s

今の段階で解明されたこの薬草の性質の一つは、おそらくyon yonは現実空間の物理的なフォームとサイバー空間のデジタルフォームを両方備える二重的な植物である。yon yonの繊維から構成されるyon netは、エマージングの時に、無数の現実空間からサイバー空間まで伸ばす細い弦のように作用して、振動を伝達することによってアンプリファイア効果をもたらしていると考えられる。迴の研究者はyon yonの物理的なフォームを長期に渡って研究し、素材として使う(yon net)ことはもうできているが、そのデジタルフォームについての研究はまだ進行途中である。もし私たちがyon yonのデジタル性質を完全に理解すれば、今まで現実空間に縛られたエマージングはいつか完全なオンライン化する日が来るであろう。

© 2022 ・ Hui Archive Department ・ the Research Center of Hui ・

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