Bianqingᵐᵒᵈᵉˡ⁶, ᵠⁱⁿᵍ, Cellophane, etc.
August 2022
"迴" (ホイ) という謎のエンティティーについての研究は、1960年代から学者たちが提唱していたサウンドスケープ研究と、後ほど音楽家からのアプローチである環境音楽の裏側に潜んでいた。世間に知られずに研究し続けてきたが、迴の複雑な生態及び技術の制限によって、迴にまつわる数多くの謎を解明できず、研究に霧がかかっていた。過去の1年間、私は昔からの研究資料を収集、整理をして、今の盛んだデジタル技術と環境のおかげで迴に関する新しい研究を進めてきた。それらのリサーチ資料、歴史、フィールドレコーディングなどありとあらゆるデータをこのサイトでアーカイブしていく予定である。
chang² suiteの最初の正式版をリリースした後、この半年間で研究開発チームを2つに分けることにした。別のチームは、chang² suiteを使ったemergingで得たデータを使ってentityの背景/生物学/物理学の研究を続ける。一方、私は独立したユニットを率いて研究所からしばらく離れていた。私のユニットは、(紀元前から録音記録を聴くことができる近代までの)歴史上ᏗᎷᏰᎥᎥᏋᏁᏖ musicを演奏するために使われてきた楽器を集め、その復元を試みるために設立された。

『research•clip•ᵠⁱⁿᵍ』 © the Research Center of Hui, 2022
古代中国の風水師が使用したこの楽器は、何世紀も前に失われていたようだ。民間伝承、地質学、音響技術、そして常に書き直される歴史記述からもつれたミュータントテクスチャーの濃霧が、大陸を永遠に覆い尽くしているのである。 幸いなことに、私たちは華北平原の北部にある秘密コミュニティで、今も使われている「bianqingᵐᵒᵈᵉˡ⁶」と呼ばれる楽器を発見した。 1000年後のコピーとはいえ、隋や唐の全盛期のqingをかなり正確にコピーした楽器と思われている。流線型の円形のデザインで、不規則な突起と流れる跡の表面は気の流れや風水の構造に対応し、撥部は軽い石や合金でできている。 これらの楽器は遺産とされ、崇拝され保護されている。
qingᵃˡᵖʰᵃ ᵇᵘⁱˡᵈは、私たちの初めての試みであった。 bianqingᵐᵒᵈᵉˡ⁶をベースにした楽器で、本当に純粋に元の設計に忠実なのであるが、私たちが現在構築しているemergingの環境では、使えないようなのである。 撥部の材質をガラスに変え、より鮮明な音色を得て低域のざらつきを抑えたが、演奏開始後10~20秒の間少しhuiの断片がクラッシュしたように部屋の上空を滑って空間に消えていくのが聞こえる程度であった。

qingᵃˡᵖʰᵃ ᵇᵘⁱˡᵈ, based on bianqingᵐᵒᵈᵉˡ⁶, © the Research Center of Hui, 2021
また、「ᵠⁱⁿᵍ」と名付けられた実験的なプロトタイプも特筆すべきモデルである。当初は、古代の楽器の遺構を現代の技術で可能な限り再現したオープンソースの楽器を開発することを目的としていたが、私たちの努力はすぐにその目的から外れることになってしまったーーᵠⁱⁿᵍの荒唐無稽 なアイデアと混乱したデザインは、qingの基本的な枠組みを歪め、伝統と対立するモダンなデザインから、非常に興味深い結果をもたらしている。メカニカルカットされた新世代の合金の構造は、先端や角度が鋭く、安定したコントロールと流動性を放棄し、代わりにランダム性のあるスティングで過激的なスタイルが実現されている。一部の保守派からは賛否両論であるが、ᵠⁱⁿᵍの不規則な振動と合金の形状による音波フィードバックにより、これまでにない全く新しいhuiの形態と相互作用のパターンを発見することに成功した。

ᵠⁱⁿᵍ, Photo = Naoki Takehisa,
© the Research Center of Hui, 2022


ᵠⁱⁿᵍ's alloy body and sharp shape results in random and aggressive sounds,
Photo = Naoki Takehisa,
© the Research Center of Hui, 2022

『research•clip•ᶜᵉˡˡᵒᵖʰᵃⁿᵉ』 © the Research Center of Hui, 2022
「ᶜᵉˡˡᵒᵖʰᵃⁿᵉ」の開発プロセスは、それほど難しいものではなかった。 ᏗᎷᏰᎥᎥᏋᏁᏖ musicとhuiの研究分野の中心部から発祥したこのヨーロッパの顫弦楽器類は、「Aui」と総称され、その周波数の汎用性と安定性から広く求められ、今日まで世界中で改良され使用されてきた。この復元プロジェクトでは、Aui楽器の電気音響化に伴う磁気軌道の乱れを最小限に抑え、huiの個々の特性を強く強調する新しいタイプのAui――ᶜᵉˡˡᵒᵖʰᵃⁿᵉ(最も普及しているAui²⁰⁰⁰をベースに)の開発を主目的としている。

ᶜᵉˡˡᵒᵖʰᵃⁿᵉ, Photo = Naoki Takehisa,
© the Research Center of Hui, 2022
興味深いのは、ヨーロッパのᏗᎷᏰᎥᎥᏋᏁᏖ musicが唯一、記譜法が進化して現在も使われている例であるにもかかわらず(これまで発見された楽譜はすべて、この古代の記譜法の異なる分派によるもの)、Auiの音符記号は全く変わっていない点である。また、Auiは一致で最も習得が難しい楽器とされている…演奏者は、スペクトルの幅と音色のコントロールを最大限まで与えられながらも、huiの姿と周波数のフィードバックに応じて、常に演奏と呼吸の微妙な調整に集中することが要求される。同じスコアでも、2人のAui奏者のプレーはそれぞれ違う。経験豊富な楽器奏者は、安定した均一な流れのある、対称的な周波数帯をᏗᎷᏰᎥᎥᏋᏁᏖ musicの底層レイヤーとして構築し、huiへの呼びかけを落ち着かせ、emerging時間を長くする傾向があります。一方、少数の前衛的な過激派は、Auiの潜在能力と性質を可能な限り最大限引き出すことに執着し、表現力豊かで鋭角的な音色が、高速で飛び交う高中音域の奔流の中で破砕寸前まで歪む。


A page of Aui's notations, Unknown Author, c.1970,
Restored by Yak Yak, © the Research Center of Hui, 2022

A new piece for ᶜᵉˡˡᵒᵖʰᵃⁿᵉ, used in an emerging test,
Composed by Yak Yak, © the Research Center of Hui, 2022
ᶜᵉˡˡᵒᵖʰᵃⁿᵉでは、さまざまな状況に対応できるよう、プレイモードを切り替えることができるように機能し、コントロールパネルの色もそれぞれのモードに対応するように開発した。 fengshui engineのコライダー出力をᶜᵉˡˡᵒᵖʰᵃⁿᵉのパルス変調器にシャントすることで、ᶜᵉˡˡᵒᵖʰᵃⁿᵉをchang² suiteの外部コンポーネントとして機能させ、emergingのフィードバックを読み取ることで自動的に適切な状態に調整することができ、Auiプレーヤーの演奏難易度と負担を軽減することができる。 今後数週間のうちに、このアプローチのソースコードを公開し、オープンソースな開発をサポートする予定である。

Alternative modes on ᶜᵉˡˡᵒᵖʰᵃⁿᵉ, Photo = Naoki Takehisa,
© the Research Center of Hui, 2022



Notes patterns of ᶜᵉˡˡᵒᵖʰᵃⁿᵉ, Transcribed by Yak Yak,
© the Research Center of Hui, 2022


ᶜᵉˡˡᵒᵖʰᵃⁿᵉ, Photo = Naoki Takehisa,
© the Research Center of Hui, 2022

『research•clip•ˡⁱⁱᵗʰᵒ⋰ᵍʳᵃᵖʰ』 © the Research Center of Hui, 2022
moomoo族が棲息しているアフリカ西部の熱帯雨林盆地の辺境は、平坦な洪積台地、そびえ立つ風化花崗岩、地殻変動でできた無数の洞窟、それを取り巻く湿地が特徴の広大で荒々しいGuoyane高地である。 我々多くの人にとって、それは禁断の領域と考えられている。 無限とも思える平面は人間の活動の匂いを飲み込み、崩れやすい巨大岩石と痩せた土壌は作物を十分に育てることができず、植生は単調で少ないが、moomooの原住民が使うyon yonが繁茂している。 moomooたちにとって、Guoyane高地は神聖な自然の象徴であり、祭祀儀式(emerging) を行う場所でもある。理論上、emergingはどこでもできることであるが、このエリアでは、干渉信号のない恵まれたランドスケープの中でhuiがくつろいで滑空している。
長年の地殻変動により、高地に広く分布する洞窟の中特有の灰色の岩石の構造が歪み、多孔質化し、様々な金属や鉱物と混ざり合って独特の磁場を生み出している。moomoo部族の職人の手にかかれば、これらの石は祭祀用の楽器の材料となる。儀式で演奏されるᏗᎷᏰᎥᎥᏋᏁᏖ musicは主に「liithophonᵉ」と呼ばれる打楽器で演奏され、職人たちが石を様々な形にカットして多様な響きを生み出している。

Landscape of the Guoyane Highlands, Photo=Olu 'Okhai Ojeikere, c.1998

Relics of liithophonᵉ, found by Yak Yak,
© the Research Center of Hui, 2021